MELSEC-Qシリーズを使っている設備が今も問題なく動いているなら、「壊れてから交換すればいいのでは」と考えることもあるでしょう。
しかし、MELSEC-Qは「今動いているか」だけで更新時期を判断しない方が安全です。
三菱電機はMELSEC-Qシリーズについて生産中止を案内しており、MELSEC iQ-RシリーズやMELSEC MXコントローラなどへの置き換えを案内しています。
ただし、Qシリーズを使っているからといって、すべての設備を今すぐ交換する必要があるわけでもありません。
まず確認したいのは、次の3点です。
- 故障したとき設備をどれだけ止められるか
- 予備品やプログラムなど、復旧する準備があるか
- その設備をあと何年使う予定なのか
「まだ動くか」ではなく、「壊れたときに復旧できるか」で考えると、更新の優先順位を決めやすくなります。
MELSEC-Qはまだ動いていても更新の検討を始めた方がいい
MELSEC-Qが正常に動いていることと、今後も安心して使い続けられることは同じではありません。
三菱電機は、MELSEC-Qシリーズの多くの機種について生産中止を発表しています。
今回発表された対象機種は、受注生産への移行、受注締め切りを経て生産中止となる予定です。ただし、使用部品の入手状況によって一部機種では時期が前倒しされる可能性も示されています。
さらに重要なのは、Qシリーズの中でも生産終了時期が同じではないことです。
すでに生産終了している機種もあれば、別の日程で生産中止が決まっているCPUやネットワークユニットなどもあります。
そのため、
「MELSEC-Qだから何年まで大丈夫」
とは判断できません。
実際に制御盤へ取り付けられているCPU、電源、入出力、アナログ、位置決め、通信などの型式を確認し、それぞれの生産・修理状況を見る必要があります。三菱電機もMELSEC-Qの生産終了品を型式別に公開しています。 三菱電機 オフィシャルサイト
「生産終了まで使える」と考えるのは少し違う
生産終了日は、その日まで故障しないという意味ではありません。
反対に、生産終了した瞬間に使えなくなるわけでもありません。
ここは分けて考える必要があります。
設備に取り付けられているMELSEC-Qが正常であれば、生産終了後も動作する可能性はあります。
問題になるのは、故障した後です。
新品を同じように調達できるのか、修理できるのか、代替品へ交換するときにどこまで改造が必要になるのかによって、停止時間が大きく変わります。
今回の生産中止対象では、三菱電機は原則として生産中止後7年間の修理対応を案内していますが、「修理対応期間でも部品が無くなった場合は対応できないことがある」と明記しています。
つまり、
「修理対応期限までは必ず直してもらえる」
とも限りません。 三菱電機 オフィシャルサイト
壊れてから考えると設備停止中に更新方法を決めることになる
まだ正常に動いている段階なら、
「この設備を更新するならどこまで残せるか」
「工事に何日必要か」
「長期休暇中に交換できるか」
といった計画を立てられます。
一方、突然PLCが故障して設備が止まった場合は、まず生産を再開することが優先されます。
同じMELSEC-Qの予備品があれば短時間で復旧できる場合がありますが、予備がなければ、そこから代替機の選定やプログラム移行、配線、通信、動作確認を始めなければならない可能性があります。
PLC本体だけを見ておけばよいとも限りません。
QシリーズではCPUだけでなく、電源、入出力、アナログ、位置決め、ネットワークなど多数のユニットが使われています。
どれか1台が入手できなくなっただけでも、設備全体の復旧方法を変更しなければならない場合があります。
だからこそ、更新は「PLCが壊れた日」ではなく、「壊れたときにすぐ戻せなくなる前」から考える必要があります。
10年以上使っているなら「動いている」だけで安心しない
シーケンサそのものの経年劣化も考える必要があります。
三菱電機はMELSECシーケンサ全般について、有寿命部品を除いた耐用年数を10年の目安としています。
また、アルミ電解コンデンサなどを使用するユニットについて、種類に応じて5年または5~10年程度を予防保全上の交換目安として示しています。
これは「10年経ったら必ず壊れる」という意味ではありません。
使用温度や環境、負荷などによって寿命は変わります。
一方で、10年以上正常に動作しているから、その後も同じ確率で故障しないという意味でもありません。
長期間使っているMELSEC-Qでは、生産終了だけでなく、機器そのものの経年劣化も含めて更新を考える必要があります。 三菱電機 オフィシャルサイト
今すぐ更新を優先したい設備
特に更新計画を早めに立てたいのは、故障すると生産への影響が大きい設備です。
たとえば、1台止まることでライン全体が止まる設備や、復旧まで数日待てない設備であれば、「まだ動いているから使う」という判断のリスクは高くなります。
さらに、
- 予備CPUや予備ユニットがない
- PLCプログラムのバックアップがない
- 電気図面が残っていない
- 設備を作ったメーカーがすでにない
- PLCに詳しい担当者がいない
- これからも長期間その設備を使用する
といった条件が重なるほど、故障後の復旧は難しくなります。
このような設備では、実際に故障してからではなく、正常に動いている間に更新方法を決めておく方がよいでしょう。
すぐ全面更新しなくてもよい場合もある
反対に、MELSEC-Qだから直ちに全面更新しなければならないとは限りません。
たとえば、数年以内に設備そのものを廃止する予定で、交換できる予備品が確保され、プログラムや図面も残っている設備なら、更新費用とのバランスを考えて継続使用する判断も考えられます。
重要なのは「更新しない」と「何も準備しない」を同じにしないことです。
継続使用するなら、少なくとも故障したときにどう復旧するかを決めておく必要があります。
予備品を使って復旧するのか。
別のQシリーズへ交換できるのか。
iQ-Rなどへ更新するのか。
設備そのものを廃止するのか。
ここまで決まっていれば、継続使用は一つの計画になります。
何も決まっていないまま「まだ動いているから使う」のとは大きく違います。
QシリーズからiQ-Rへの更新はCPU交換だけとは限らない
MELSEC-Qから新しいシリーズへ更新する場合、「古いCPUを新しいCPUへ差し替えれば終わる」とは限りません。
三菱電機では、MELSEC-QからMELSEC iQ-Rへの移行を支援するツールや移行ガイドを用意しています。
GX Works2で作成したプログラムをGX Works3でiQ-R用に変換する機能もありますが、一部変換できない箇所があります。
また、一部の入出力ユニットなどでは既設端子台やコネクタを流用できる仕組みも用意されていますが、すべての機種でそのまま使えるわけではありません。
実際の更新では、
CPU
↓
入出力・特殊ユニット
↓
ネットワーク・通信
↓
外部配線
↓
プログラム
↓
周辺機器との接続
まで確認して、設備として動作するかを判断する必要があります。 よくある質問(FAQ) | 三菱電機 FA
まず制御盤を開けて型式を確認する
MELSEC-Qを使っている設備で最初に行いたいのは、いきなり更新見積もりを取ることではありません。
まず、現在何が使われているのかを把握します。
CPUだけでなく、
- 電源ユニット
- 入出力ユニット
- アナログユニット
- 位置決め・モーション関係
- ネットワーク・通信ユニット
など、ベース上に装着されているユニットの型式を確認します。
そのうえで三菱電機の生産終了品情報を確認すると、
「すでに生産終了している」
「これから生産終了する」
「修理対応期間が残っている」
「推奨代替機種がある」
といった状況を型式ごとに整理できます。
MELSEC-Qというシリーズ名だけを見て更新時期を決めるより、ここまで確認した方が実際の設備に合った判断ができます。 三菱電機 オフィシャルサイト
更新するか迷ったら「止まったとき」を基準に決める
MELSEC-Qがまだ正常に動いているなら、判断は大きく3つに分けられます。
故障したら大きな損失が出て、予備品もなく、今後も長期間使う設備なら、計画更新を優先します。
設備はまだ使うものの、予備品やバックアップがあり、故障してもある程度停止できるなら、更新時期を決めたうえで継続使用する方法があります。
近いうちに設備自体を廃止する予定なら、全面更新せず、予備品やバックアップを確保して延命する判断も考えられます。
つまり、
「MELSEC-Qはまだ動いているから更新しなくてよい」
でも、
「生産終了するから全部すぐ交換する」
でもありません。
判断基準になるのは、
「もし明日このPLCが故障したら、予定した時間内に設備を復旧できるか」
です。
答えが「分からない」であれば、まず更新するかどうかを決める前に、型式、予備品、プログラム、図面、設備の残り使用期間を確認するところから始めた方がよいでしょう。
正常に動いている今なら、故障対応ではなく「計画」として更新方法を選べます。
出典
三菱電機|MELSEC-Qシリーズ生産中止のお知らせ
三菱電機|MELSEC-Qシリーズ 生産終了に伴う更新のご案内
三菱電機|MELSEC-QシリーズからMELSEC iQ-Rシリーズへの移行ガイド
三菱電機|MELSEC シーケンサの予防保全と点検のお願い