MELSEC-Qは壊れるまで使っていい?|更新を先送りするリスクを確認

MELSEC-Qが今も正常に動いているなら、「故障するまでこのまま使えばいい」と考えることもあるでしょう。

しかし、MELSEC-Qは「動いているか」だけで継続使用を判断する段階ではなくなっています。三菱電機はMELSEC-Qシリーズを順次生産終了としており、後継のMELSEC iQ-Rシリーズへの置き換えを案内しています。

だからといって、すべての設備を今すぐ更新しなければならないわけではありません。

重要なのは、故障してから交換できる設備なのか、それとも故障する前に更新計画を立てる必要がある設備なのかを分けることです。

MELSEC-Qは「壊れるまで使う」こと自体が問題なのではない

MELSEC-Qを使い続けているだけで、直ちに設備を更新しなければならないわけではありません。

設備の停止がほとんど問題にならず、故障した場合の復旧方法も確保できているのであれば、当面継続して使用する選択肢はあります。

一方で、生産終了が進む機器では、故障したときに初めて対応を考える方法が取りにくくなります。

三菱電機はMELSEC-Qシリーズについて、順次生産終了とし、修理対応は原則として生産中止後7年間と案内しています。また、生産終了品の検索ページでは、形名ごとに生産終了日や修理対応期限、推奨代替機種を確認できます。

つまり、「Qシリーズだからあと何年使える」と一括りにはできません。

まず確認する必要があるのは、設備に使われているCPU、電源、入出力、ネットワークなどの実際の形名です。

更新を先送りしたときに困るのは「故障したこと」より「復旧できないこと」

古い制御機器でも、故障しなければ設備は動き続けます。

問題になるのは、故障したときです。

例えばCPUが故障して交換品がすぐに用意できても、現在動いているプログラムやパラメータを戻せなければ、そのまま設備を復旧できるとは限りません。

逆に、プログラムのバックアップがあっても、使用している特殊ユニットや通信ユニットの代替方法が分からなければ、短時間では復旧できない可能性があります。

そのため、MELSEC-Qを継続使用する場合は「部品が壊れるか」だけを見るのではなく、故障したあとに元の設備へ戻せるかまで考えておく必要があります。

まず「止まったら何日困る設備か」で考える

更新の優先度を決めるときは、設備の古さだけでなく、停止した場合の影響を見ると判断しやすくなります。

生産ラインの中心設備など、停止すると製造そのものが止まり、数時間から1日でも大きな影響が出る設備であれば、故障を待ってから対応する方法はリスクが高くなります。

予備設備へ切り替えられる、数日止まっても業務への影響が小さい、近いうちに設備自体を廃止する予定があるといった場合は、継続使用できる余地があります。

同じMELSEC-Qでも、

「故障したら困るから古い」

のではなく、

「故障したあと短時間で復旧できないから、先に対策が必要」

と考えた方が実際の設備更新に近い判断ができます。

予備品があるだけでは安心できない

交換用のCPUや電源、入出力ユニットを保管している工場もあります。

予備品があれば故障時のリスクは下げられますが、それだけで十分とは限りません。

確認したいのは、少なくとも次の状態です。

  • 実際に使用しているユニットの形名が分かる
  • 必要な交換部品が確保されている
  • CPU内のプログラムや設定データを取り出せる
  • バックアップデータが保存されている
  • 使用しているソフトウェアや接続方法が分かる
  • 故障した場合に交換・復旧できる担当者や業者が分かる

「棚に中古のCPUが1台ある」というだけでは、設備を復旧できるとは限りません。

特に長期間動き続けている設備では、設備を立ち上げた担当者がすでにいない、図面が残っていない、最新のプログラムがどれか分からないという問題も起こります。

この状態なら、機器がまだ正常でも先にバックアップと構成確認をしておく価値があります。

電源やバッテリも「CPUが動いているから大丈夫」とは限らない

MELSEC-QはCPUだけで構成されているわけではありません。

三菱電機はMELSEC-Qシリーズの電源ユニットについて、約5年での交換を推奨しています。

また、交換用バッテリには、プログラムメモリや標準RAM、ラッチデバイスなどの停電保持に使われるものがあります。

長年問題なく稼働している設備でも、構成部品すべてが同じ状態とは限りません。

「CPUが故障するまで使う」とだけ考えるのではなく、電源、バッテリ、通信ユニットなども含めて設備全体を確認する必要があります。

更新するなら配線まで全部やり直すとは限らない

MELSEC-Qから後継シリーズへ更新すると聞くと、「制御盤の配線を全部やり直すのでは」と考えるかもしれません。

しかし、三菱電機はMELSEC-QからMELSEC iQ-Rシリーズへの移行を支援するため、プログラム変換や置き換え支援ツールを用意しています。

入出力ユニットなどでは、既設端子台やコネクタを利用して配線を流用できる構成もあります。

ただし、すべての機種や構成でそのまま置き換えられるわけではありません。

使用しているCPU、入出力、アナログ、位置決め、通信ネットワークなどを確認し、どこまで既設設備を残せるかを調べてから更新範囲を決める必要があります。

そのため、実際に故障して設備が止まった状態で初めて置き換え方法を調べるより、正常に動いているうちに移行方法だけでも確認しておく方が余裕があります。

今すぐ更新した方がよい設備

次のような設備では、故障するまで待つより更新を具体化する優先度が高くなります。

  • 故障すると生産ライン全体が止まる
  • 長期間停止させられない
  • 使用している機器の修理対応期限が近い、または終了している
  • 交換用部品を確保できていない
  • プログラムやパラメータのバックアップがない
  • 図面や設備構成が分からない
  • 復旧できる担当者や業者が決まっていない

この状態では、「今は正常」ということが継続使用の根拠にはなりにくくなります。

故障前なら設備を止める日程を選べますが、故障後は設備側から停止日を決められてしまいます。

計画更新でもよい設備

すぐに停止する危険が確認されているわけではなく、バックアップや予備品もある程度そろっているなら、即時交換ではなく計画更新という方法があります。

設備の定期停止、長期休暇、機械の改造などに合わせて更新すれば、生産への影響を抑えやすくなります。

この場合でも、「いつか交換する」で終わらせず、

  • 使用機器の形名を一覧にする
  • 生産終了・修理対応期限を確認する
  • プログラムをバックアップする
  • 後継機種と置き換え方法を確認する
  • 更新できる停止時期を決める

ところまでは先に進めておく方が安全です。

当面そのまま使える場合もある

すべてのMELSEC-Qを急いで交換する必要はありません。

例えば、設備自体を近いうちに廃止する予定があり、故障時には修理せず設備を停止できる場合があります。

また、停止しても事業への影響が小さく、必要な予備品やバックアップが確保されている設備なら、更新費用とのバランスを見ながら継続使用する判断もできます。

ただし、この判断ができるのは「古いけれど動いているから」ではありません。

故障した場合の対応方法まで分かったうえで、継続使用を選んでいる状態が重要です。

MELSEC-Qを使っているなら最初に型式とバックアップを確認する

MELSEC-Qを見つけても、いきなり見積もりを取る必要はありません。

最初にやることは、制御盤を確認して使用しているCPUや主要ユニットの形名を把握することです。

その形名から、生産終了状況、修理対応期限、推奨される移行先を確認します。

同時に、現在動いているプログラムや設定データのバックアップが残っているかも確認します。

この2点が分かれば、

「故障する前に更新する」

「次の定期停止で更新する」

「復旧手段を確保して当面使う」

のどれを選ぶべきか判断しやすくなります。

MELSEC-Qは、まだ動いていることだけを理由に壊れるまで使うのではなく、「壊れたあとにどれだけ早く戻せるか」を確認してから継続使用するか決めるのが現実的です。

出典

三菱電機|シーケンサ リニューアル MELSEC-Qシリーズ
三菱電機|MELSEC-Qシリーズ生産中止のお知らせ
三菱電機|MELSEC-Q 生産終了品
三菱電機|MELSEC-QシリーズからMELSEC iQ-Rシリーズへの移行ガイド
三菱電機|MELSEC-QからMELSEC iQ-Rへの置き換え
三菱電機|電源ユニットの寿命について
三菱電機|Q6BAT 仕様